保育のきほん要素


保育所保育指針によると保育の内容は「養護」と「教育」です。

「養護」とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助やかかわり、とあります。これは、同じく子ども(乳幼児)を守り生活の援助をしていく意味の「育児」ということばに置き換えることができるでしょう。

 

では乳幼児にとっての「教育」とは、なんでしょうか。教育研究所ゆずりはでは、乳幼児にとっての教育は、学習ツールを使って知識を増やすことではなく、後にいろいろなことを学ぶ基本となる好奇心や思考を育てることだと考えています。そのためには、感情と結びついた「体験」をたくさんすることがとても大事です。ここでいう「体験」は、特別な行事や学習プログラムに参加することではありません。日常的に積み重ねられる豊かな「あそび」の体験です。

 

例えば、大人がしてくれたおはなしの世界に入り込んで自分で再現してみることだったり、落ち着いた環境の中で思いっきり身体を動かすことだったり、友だちとけんかして仲直りして仲間関係をつくっていったり。

そういった、日常的な大人のかかわりがあってこそできる「あそび」の中で、ことば・運動・社会的な体験を積み重ねていくことがその子の経験になります。その経験があってこそ、年齢が上がり知識を得た時に、物事を抽象化して認識し思考できるようになるのです。豊かな運動やことばの刺激の経験は、脳の発達自体にも良い影響があると言われています。一見遠回りのようでも、のびのびと「あそび」の中で体験を増やすことが、乳幼児にとって何よりの「教育」なのです。

ゆずりはは、「ことば」「音楽」「運動」「自然」「生活」5つを、豊かな「育児」「あそび」を助ける重要なきほん要素と考えています。

 

「ことば」は・・・

大人から直接話しかけられることによって、どんどん豊かになります。テレビやDVDでいくら膨大な会話を耳にしたとしても、身近な大人からかけられることばの力にはとても及びません。日々の会話や、絵本の読み聞かせなどを通して得たことばを基に、子どもたちは自分の頭で考え、感じたことを整理し、世の中のことを理解します。また、まわりの人の気持ちを想像する力、思いやり、コミュニケーション力を育てるためにもことばは不可欠です。

 

「音楽」は・・・

学校のテストでは得意/不得意が分かれる教科になってしまいますが、本来は「音を楽しむ」もの。小さな時に、あそびや育児の中で自然と音・リズム・拍・テンポといった音楽の基本的感覚や音楽を楽しむ感性を身につけたいものです。何もプロ並みの演奏や歌唱ができなくても、音楽のリズムにのって楽しんだり、美しい音楽に感動し酔いしれたりすることはそれだけでその子の一生の宝になるでしょう。また、仲間の声や演奏に耳を傾けながらハーモニーを楽しめるようになることはチームワークや周囲の人へとの協働の感覚も培います。

 

「運動」は・・・

得意/不得意にかかわらず、基礎的な身体能力や体力を身につけ、健康で安全に過ごすためにとても大切です。今、子どもたちの身体能力が低下している、とニュースでも話題になりますが、変わったのは子ども自身が持っている力ではなくて、育ち方や環境の方。大人が意識してやらせれば、子どもはちゃんとできるのです。日常生活の中で子どもが安全に暮らすためにも、とっさに自分の身を守れる力があるかどうかはとても大事。是非小さい頃から楽しく身体を動かして、体力と健康を育てていきましょう。

 

「自然」は・・・

好奇心や感謝の心、まわりへの思いやりや想像力を育ててくれます。文部科学省が行ったある調査では、子どもが豊かな自然体験をしていることと、「友達が悪いことをしていたら、やめさせる」などの「道徳観・正義感」が身についていることとの間に、高い相関の傾向があると明らかになりました。都会では子どもたちに自然を体感させるのは難しいと感じることも多いかもしれませんが、外では園庭や身近な自然をできるだけ活用し、室内でもわらべうたなどを通じて、自然の風物を感じられる体験をできるだけ増やしたいものです。

 

「生活」は・・・

「自然」と同様、文部科学省が行ったアンケートの中で「小さい子どもを背負ったり、遊んであげたりしたこと」といった生活体験をしていることと、「道徳観・正義感」が身についていることとの間に相関関係が見られました。一方最近では、保育園にいる時間が長時間化し生活の実体験が少ない子どもの姿も見られるようになってきました。保育園では、ぜひ、生活を二次体験できるような再現あそび(おままごと等)に没頭できる環境を整えたり、できるだけ自然な流れの育児を体験させられるよう工夫したいものです。

昔から子どもたちによって歌いつがれてきた日本語のわらべうたには、日本語らしいひびきや豊かな語彙(ことば)、独特のリズムや音程(音楽)、身体を動かせるあそび(運動)、季節や植物・動物の営みを感じられる歌詞(自然)、行事や日常の動きをきりとった歌詞(生活)が、あちこちにちりばめられています。

また、わらべうたがうたわれる場面では、大人が子どもと向き合ってかかわることが不可欠です。少し大きくなれば、友達と歌う中で喜びを共にしたり、ルールを守らなくては仲間に入れないことを知ったり、できないことを助けられたり―わらべうたの中で子ども自身が様々な練習を積んでいく姿もみられるようになります。

ゆずりはでは、わらべうたを単なる昔懐かしいあそびではなく、五大要素を兼ね備えた総合的なあそびとして積極的に保育にとりいれたいと考えており、活動のひとつとして、わらべうたの学習会やインストラクターの養成に力を入れています。


【参考】「子どもの体験活動等に関するアンケート調査」文部科学省生涯学習審議会(平成114月)

     http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_gakushu_index/toushin/1315191.htm