「♪と~んでけ♪」(2006.7月 ゆずりはだより 第42号より)

♪ たんぽぽ たんぽぽ むこうやまへと~んでけ ♪

というわらべうたを4月のわらべうた学習会で紹介した。

鬼ごっこのようにして遊ぶこともあるが、たんぽぽの綿毛を飛ばすときに歌ったこと、飛んだ綿毛を見ること(追視)は、“見る・観察する・集中する”力を育てる練習になっているという話をした。

 

 5月の学習会の際、♪たんぽぽ♪を実践した様子を知らせてくれた人がいた。

とてもうれしそうに話し始めた彼女の様子に、私は「きっと楽しかったのだろう」と想像した。

彼女の話では「たんぽぽの綿毛を見つけてとろうとしたら、『私も!』『僕も!』で、大騒ぎになったんです。

でも、『ちょっと待って!私に最初にやらせてね!』と言って、♪たんぽぽ たんぽぽ むこうやまへと~んでけ♪と

歌って、フ~ッと静かに飛ばしたら、子どもたちがシ~ンとなって、綿毛を目で追いかけたんです。

とっても静かで豊かな気持ちになれた一瞬を経験しました。

そのあとは、たんぽぽの綿毛を見つけると、子どもたちは自分たちで歌って飛ばすのを楽しんでいるんですよ」

とのことだった。私も豊かな気持ちを分けてもらえたような気がした。

 

 ある1歳児クラスに入ったときのこと。

1人の子が5センチほどの長さの丸い棒(おもちゃのパーツ)をなめようとしていた。

思わず手を出すと、その子は棒を私の手のひらに載せた。そこで、♪たんぽぽ♪の歌を歌ってフ~と吹くと、棒は転がり、手のひらから落ちた。転がって落ちるのが面白いのか、もう一度、という身振りでその子が棒を私の手のひらに乗せると、ほかの子も持っていた棒を次々に差し出して要求する。

「今度は赤いのね」「黄色いのはどこまで飛ぶかしら」などと、ことばをかけながらしばらく繰り返していたが、そのうち私の方が飽きて来たので、棒の向きを縦向きに変えて吹いてみた。縦向きに置いた棒は吹いても転がらない。

「飛ばないね~」というと、子どもも一緒に吹いた。やはり転がらない。そのあと、もう一度横向きに置いて歌い、一緒に吹くと棒はころころと転がって行った。転がった棒を取りに行った子は、うれしそうな顔をして戻って来ると「転がして」と棒を差し出した。「どこまでいくかな?」と勢いよく転がすと、棒を追いかけて行き、勢いが弱まったところで棒を掴まえた。ほかの子どもは、その様子を目でずっと追いかけていた。

 

 こんな単純なことを、7~8人の子どもがけんかもせずに楽しんでいる。これが子どもの本質だと思う。

1人ひとりが、遊んでいるということを感じているのだろう。このようなことができるのがわらべうたなのだ、と改めて感じる一時だった。

伝承されてきたわらべうたの中には、人と人とが接し、共に生きるときに必要な雰囲気、距離、思いやり、豊かさ、ゆったりとした感覚など、経済や効率では計れない大切なものが含まれていると思う。音楽的に扱うわらべうたも大切で音楽教育にとっては有効であるが、「教える道具」としてのわらべうたではなく、人間を育む豊かなわらべうたを子どもたちに手渡していきたいと思っている。

(木村はるみ)

 

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